休憩室

人間を休んでいる

2018年に聴いた良かったアルバム

ようやく締まるね2018

 この時期特有の連続投稿ですね。「良いお年を」といった後に更新してはいけないという法はない。

 

 今年はApple Musicをフルに使おうという姿勢でとにかくダウンロードしては聴くを繰り返したら結構聞くジャンルが広がった。特にエレクトロニカ/アンビエント系に突っ込んだのは激烈に鬱がひどくてメロディを聴くのがきつかった時期があるってのも大きいんだけど、電子音楽系に多い非楽音の使い方に結構感動したりして普通に良かった。

 

 今年発売の奴とそれ以外の奴で分けてやっていこうかなと思ったんだけど、くそ長くなるので今回は今年発売の奴だけ。音楽、良~~~~~

 

聴いた順にやっていくぞ

 

Easter - EP

Easter - EP

  • Ashley Henry & The RE: Ensemble
  • ジャズ
  • ¥1200

  1991年生まれ、イギリスで活躍中のキーボーディストAhsley Henryによるアルバム。ラテンからロバート・グラスパー的なアプローチまで多様な曲が31分という近年稀にみる聴きやすい長さのアルバムに集約されている。鬱か老化か本当に集中力がなくなっているときは10分間も演奏するとか勘弁してくれってなるが、このアルバムは本当に1曲1曲の長さが適切で前半期ヘビロテしていた。ドラマーがトリオ編成の時とクインテット編成の時で交替しているようだけど音の違いが明確に出ていてそれが効いていると思う。全曲好きだけど"Pressure"がスピード感があって好きです。

 

Chris Dave and the Drumhedz

Chris Dave and the Drumhedz

  • クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ
  • R&B/ソウル
  • ¥1900

  満を持して登場したChris Daveのリーダーアルバム(以前無料で突如撒かれていた謎のテープは謎すぎて俺の中で謎になっている)。Chris Daveを知らない人に説明すると、現在地上で一番ドラムがうまいおじさん候補筆頭だと思う。

 


Chris Dave and the Drumhedz Actual Proof

 一聴しただけでは一切意味不明なフレーズを入れてくるんだけどその音すべてがなぜかグルーヴィーにはまりどうしようもない。このActual Proofの演奏はかなりまとまっているほうで、今年発売された上記のアルバムだと、ヒップホップ系トラックに多い1曲中での雰囲気の変化も相まってさらにすごいことになっていた。ビリビリ来るリズムが好きな人はまず買って間違いないアルバムだと思う。"Spread Her Wing"が後半のエモすぎる盛り上がりもあって好きです。

 

Kodomo Rengou

Kodomo Rengou

  邦ロックをとにかく通らずに来てしまったのだけどこのアルバムはぐっときた。トリオという編成を核としてできるソリッドなサウンドがほかの楽器を増やしても死んでなくて安易なポップを排している。「報いの一日」と「眼球都市」が好きだな。多分安易にコード弾きを選択しない小編成バンドが好きなんだと思う。「眼球都市」は平沢進っぽさを若干感じたんだけどニワカだからかな。あと純粋に楽器が全員うまい。うまいバンドは好きです。

 

Un Día Cualquiera

Un Día Cualquiera

  • Harold Lopez-Nussa
  • ラテンジャズ
  • ¥1500

  今年もキューバピアノ勢はよかった。Alfredo Rodriguezも出してたけどかなりポップに寄りまくっていたのでこちらを選択。キューバ特有の異常に気持ちいクラーベ、三連符のモタりが楽しめる。"Conga Total/El CUmbanchero"でテクニックが爆発しすべてが灰燼に帰す。

 

  エレキギターでこれだけ静謐な音楽ができるのかと感嘆させられたアルバム。Bill Frisellだぞできて当たり前だろがという話だが、どうもBill Frisellに対してJohn Zornとかとやってた頃のフリーバチバチおじさんという印象があってそれを引っ張っていた。このアルバムで完全にイメージが更新された。まずは1曲目"Pretty Stars"を聴いてどちゃくそ繊細なタッチと多重録音の技巧を味わってほしい。

 

  とにかく"Something For Your M.I.N.D."が良すぎていれた。各人がやりたいことをやり、トラックを丁寧に重ねてずらしてヨレを出してて何かキメてるような気分になる。Tiny Desk Concertでの異常な絵面が良かったですね。


Superorganism: NPR Music Tiny Desk Concert

 

Geography

Geography

  • Tom Misch
  • エレクトロニック
  • ¥1500

  Jacob Collierといいどうしてイギリスはクソ若い才能が次々と出てくるのか。Tom Mischは21歳。アシッドジャズの確かな影響の上に積まれる斬新なコードワーク、ヴァイオリンなどを用い、小編成にまとまったアコースティックな雰囲気。。。"Lost in Paris", "It Runs Through Me"が最高。

 

Understander - EP

Understander - EP

  • Please Will
  • エレクトロニック
  • ¥600

  一番鬱だった時に一番聴いた。人間味が一切ない音の構築物といった感じ。作業用BGMとしてずっと回していましたね。"Power"か結構重ねてある音は多くて豊かなはずなんだけど無機質なんだよなあ。こういうのをIDMというんですか?どうやら違うらしいですが。僕はジャンルっていう概念全然好きじゃないんだけど、人に音楽を説明するうえでやっぱ便利なのは便利なんだよな。エレクトロニカでは範囲が広すぎる気がするし。ビートはかっちりでてるからアンビエントではないと思うけどデトロイトテクノほど踊れる感はないしなあ。

 

Moe Moe - EP

Moe Moe - EP

  • Moe Shop
  • ダンス
  • ¥1500

  一番最初に紹介した"Easter"と並んで今年一番聴いたアルバム。なぜこのジャンルに行きついたのか思い出せないけど、確かYunomiの「インドア系ならトラックメイカー」あたりを聴いてたどっていったのかな。この歳になってようやくアニメ声と打ち込み系音楽との相性に気づきました。Moe Shopのトラック、3次元としか形容できない深さのあるビートが流れていて、グルーヴと声で二重に気持ちがいい。メンヘラが加速しそうな歌詞ばかりなのは内緒だ。"Virtual"を一時期めざましにしていました。

 

The Return

The Return

  • Kamaal Williams
  • ジャズ
  • ¥1500

  とにかくYussef Kamaal名義の"Black Focus"が良すぎたためどうかと思ったけど相変わらず最高だった。こうしてみると今年はイギリス発の音楽ばかり聴いているな。ただ僕はYussef Dayesの機械みたいなビートが好きなんだ……!またやってくれ!このアルバムだと"Catch the Loop"のスピードがかなり出てていい。"Black Focus"よりも特にスネアの音に関して人間味がある。

 

Expectations - EP

Expectations - EP

  • SPELLWRKS
  • エレクトロニック
  • ¥600

  今年ヘビロテしたエレクトロニカ系のアーティスト、SPELLWRKS。基本的に配信だけでアルバムを出していてどういう人間なのか謎。説明しづらいけど、僕はこういうタイプのビートが好きなんだな。これを最初に聞いてあさりまわった。一番好きなアルバムは今のところ"1986"だな。割とおとなしいアルバムだけど"River of the Gods"でのキックとスネアの関係性からこの人のビートを察してほしい。

 

  「POP TEAM EPIC」の厚みが飛び抜けていて通しで聴くと面白くなってくる。あと掟ポルシェは何を言っているんだ。「どうして!ルイ先生」は発想が悪い。

 

Palimpseste (Voyage imaginaire dans les ruines de Detroit)

Palimpseste (Voyage imaginaire dans les ruines de Detroit)

  • Sylvain Daniel & Palimpseste
  • ジャズ
  • ¥1500

  フランスのJ Dillaみたいなトラックしてんなお前な。"Intro"から"Game On"の流れを聴いてもらえれば大体このアルバムが正解であることがわかると思います。ベースライン気持ち良すぎんよ~~~

 

  「おにぎり~~おにぎり~~~」

 

 どうした?

 

The Teller (Aquila)

The Teller (Aquila)

  • エリック・ハーランド
  • ジャズ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

  なぜかこれだけちゃんと表示できなかった……Eric Harlandの"13th Floor"です。

現代ジャズにおける最強バンド"Voyager"が帰ってきた。ギタリストがJulian LageとNir Felderの二人体制になりメカニカルなサウンドに強くなったことが"The Teller(Aquila)"で示されている。上の記事でChris Daveが地上最強のドラマーであることを示唆したけど、Eric Harlandもその候補筆頭。細やかな音色の使い分けと音のつなげ方。ビートを損なわずにほかのメンバーと一緒に歌うような演奏。"Contrast"ですべてが高まる。

 

草木萌動 - EP

草木萌動 - EP

  • 長谷川白紙
  • J-Pop
  • ¥1500

   年末に突如出現した新星。日本人でこれだけ自然にリズムモジュレーションとポップを合成させられた人間がかつていただろうか。恥ずかしながら「キュー」がYMOのカバーであることを知らなかったのだけど、原曲と聞き比べてみてもうまく当時の雰囲気を保ったままコードやリズムをアップデートしている。「草木」を聴いて躁転しよう。なんだこのコードワークはぁ?面白すぎて死んでしまう……

 

いい年だった

 こうしてみるとほんとに大量に聴いてよかった。好きな曲やアーティストが去年までより格段に増えた。まだまだ聴きたい音楽が広がっている。邦楽をあまり聴かずに今までやっていたから来年はもう少し日本語の曲を聴いていけたらいいなと思う。詞が全然頭に入らないたちなんだけど、一回意識的に修正をかけていくと後々いいことがありそう。まあでもあんまりギチギチにやっていたら義務感に縛られて何も楽しくなくなるし、好きに聴いていこうな。

 

 では、よいお年を~~~(2回目)

 

Hondarribia ametsetan

Hondarribia ametsetan

  • Coro Mixto & Javier Busto
  • クラシック
  • ¥1500

 

 

2018年に読んだ良かった本

 もう終わるのかよ2018年

 お久しぶりです。文フリの告知ぶりですね。

 2018年は人間関係の年でした。来年の予想ですが、人間関係の年になると思います。

 

 このブログに関係することで特筆すべきこととしては読書ノートをやめてしまったというのがありました。いや~~~~~今思うとやめなくてよかったな。いい本自体は記録しなくても記憶に残るんですけど、その細部を説明しなきゃいけない段になって途端にめんどくさ度があがるんですよね。来年は読書メーター復帰も視野に入れていきたい。

 

 それでは、読んだのが早かった順に紹介していきます。2018年出版の本というわけではないのでご了承をば……

 

勉強・学術系

 

科学哲学から見た実験経済学

科学哲学から見た実験経済学

 

  経済学と現実のズレを前にしたときには基本的に二つのアプローチがあって経済モデルを現実に寄せていくか現実を経済モデルに寄せていくかなんだけど、そのどちらに対しても実験というアプローチは哲学(とくに論理学)的に有効だよね、ということが事例を交えて書かれている。経済学101といい、現実を経済学的に改造しようという気合の入った人々がいて僕はうれしいよ。

 

科学が作られているとき―人類学的考察

科学が作られているとき―人類学的考察

  • 作者: ブルーノラトゥール,Bruno Latour,川崎勝,高田紀代志
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 1999/03/01
  • メディア: 単行本
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  自然科学の成果がどのように生み出されているのかを推理小説的に再構成し、それには社会的営為が介在していることを明らかにした、アクター・ネットワーク理論の先駆けとなった本。真理が真理になるためには真理に携わる人々が自分たちの科学を正統とし、そうしつづけるために闘争しなければならない。科学は軍という強い比喩。

 

日本現代怪異事典

日本現代怪異事典

 

  どれだけ読んでも、どこから読んでも飽きないですね。ババアの多さ。とにかくババアが素早く走る。子供たちはでかい数字が好き。インターネット発の怪異も多く収録されていて、2ちゃんねるにそんなに深く使っていなかった自分としては新鮮な情報がいくつもあってよかったと思っていたのが、巨頭オになっていた。

 

資本主義リアリズム

資本主義リアリズム

  • 作者: マークフィッシャー,セバスチャンブロイ,河南瑠莉
  • 出版社/メーカー: 堀之内出版
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  「絶望は愚か者の結論だ(大年寺三郎太)」とばかりに、資本主義しかないと思い込ませてくる資本主義リアリズムに隙は無いのかと筆者は探っていく。精神疾患の増加に資本主義の亀裂を見るのだけど、筆者がうつ病で自殺しているので本当につらい気持ちになる。コンテンツの大量常時消費に駆り立ててくる資本主義を生き残った者は、死ぬまで戦わなければならない。僕は死にそうですが……

 

西欧精神医学背景史 【新装版】

西欧精神医学背景史 【新装版】

 

  精神医学自体は19世紀くらいから分科した新しい概念なんだけど、この本では精神医学の源流を古代ギリシアまで遡り、てんかんとかヒステリーなど昔から知られていた症状に対して人々がそれをどうとらえ、どう対処してきたのかという歴史を見ていく。そういう意味では西洋的精神の系譜学としてみることもできてとても面白かった。てんかん的発作を、ダイモーンが入り込んできて身体を操ったのが原因として本人を恥から守るというシステムとか良かった。(特に古代における)神話とか宗教の重要性が本当に身に染みる。

 

小説・文学系

麻薬常用者の日記〔新版〕 I天国篇
 

 

 オカルト界の雄、アレイスター・クロウリーの小説です。男女がひたすらヘロインをやって気持ちよくなったり完全に無になったりを繰り返すよくある麻薬文学ですが、後半に突如クロウリーが建てた実在する宗教施設(?)、テレマ僧院への勧誘が始まり、登場人物もテレマ僧院に来ることで己の真の欲求に気づき自己救済するというヤバい話が始まります。意外と元気になれる小説なので精神的に弱っている人におすすめ。僕もそろそろ読み返そうかな。薬物はダメ、ゼッタイ。

 

平行植物 (ちくま文庫)

平行植物 (ちくま文庫)

 

 

 絵本作家として有名なレオ・レオーニが書いた平行植物という架空の植物群に関する論文集の体裁をとった小説です。最初は普通に実在の植物かな?と思う人もいるかもしれませんがやがて平行植物たちの性質が明らかに僕らの知っている物質のそれではないことに気づくと思います。注釈も凝っていて楽しい。ボルヘスが好きな人は間違いなく好きです。

 

 

 モテない人間の聖書。モテる人間は『存在の耐えられない軽さ』を聖書にすればいいと思います(適当)

 

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 

 

 表題作で久しぶりに泣いたよ僕は。家族を大切にしようと思ったくらいだよ。

 SFは全然読まずに来てしまったのだけど、とてもストーリーテリング重視で読みやすかった。思えばこれがきっかけでSFを掘るようになった気がする。

 

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

 

 

 ケン・リュウを明らかに贔屓しているな。中国出身のSF作家たちのアンソロジーなのだけど方向性が多様で飽きなかった。特に始皇帝が100万人を使って人間論理回路を組み、円周率を計算させる話が発想の勝利という感じで読んでて爽快さがあった。

 

狭小邸宅 (集英社文庫)

狭小邸宅 (集英社文庫)

 

  本物の文章だけが連なっている本物の書物。一切悪意があるわけではないと前置きしてから、お前は何者にもなれないと告げるシーンは圧倒的な正しさが現前し、福音のように響く。社会人になる前に読み絶望し、社会人になってから読み希望せよ。

 

物が落ちる音 (創造するラテンアメリカ)

物が落ちる音 (創造するラテンアメリカ)

 

  パブロ・エスコバルを中心とするカルテルとの麻薬戦争が終わった後のコロンビアで、ある男が死んだ。彼は何者だったのかをめぐって主人公はある女を訪ね……というのが大まかな流れなのだけど、ラテンアメリカ文学はどうしてこんなに地の文による語りが豊饒なのだろうか。冒頭、エスコバルの動物園から逃げ出したカバが撃ち殺されるという話から自然に本題に滑り落ちていく気持ちよさ、100点!!!!

 

カンガルー・ノート (新潮文庫)

カンガルー・ノート (新潮文庫)

 

 

  脛にかいわれ大根が生えた男の話が生死をめぐる謎の冒険に発展していくのすごい。プロットをガチガチに固めて綺麗に収斂させる三島由紀夫の対極に位置するだろう。こんなにも次々と奇想(おそらく弁証法的な発想を使っているのだけど)を繰り出せる安倍公房からこれからも学んでいきたい。僕は何を言っているんだ。 

 

個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)

個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)

 

  大江健三郎は恥ずかしながら今年まで読んだことがなかったのだけど、ものすごい緻密な心理描写を積み重ねていく。とにかく明晰で、安倍公房のように謎は残さない。重い障害児が生まれるかもしれない、生まれる、無理だ、つらい、いやでも……いややっぱ無理など心情の変化を追うだけで、特に大きな事件を起こすこともなく小説を書ききるのすごい。こんなん書かれたら何も書けんわという気持ちになってくる。

 

砂丘律

砂丘律

 

 

 とにかく本当にかっこいい(語彙力)短歌というと57577のきっちりした韻律があって、字足らずや字余りがあるくらいだと思っていたのだけど、ここに収録されている歌は本当に自由。でありながら散文というには密度の高すぎる言葉が連なっててビリビリ来る。「煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか」の歌から漂う二人の厚い関係性の積み重ね、変遷、不変性そして再会……すごい。 

 

 

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

 

  複数の筆名を使いこなし多様な詩・言葉を書き連ね続けたペソアの散文集。書くということに関してこれ以上ないほど深く絶望し、そしてそれを書くことで乗り越えたことがわかる強靭な思考の軌跡。何度読んでも新しい意味が出てくる。今年出た藤田祥平さんの『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』でも引用されていたような。

 

いい女vs.いい女

いい女vs.いい女

 

  木下古栗は現在の文学界におけるある意味でのトップランナーであり、すべての小説が面白いので買いましょう。今だと文藝で連載されてる「新連載」シリーズは本当にひどい。特に『サピエンス前戯』はすべてが本当にひどかったし早く単行本化してほしい。「いい女vsいい女」だと地味だけど本屋大将が良かった。両手で成人向け雑誌を持って二冊同時に立ち読みするなよ。

 

ガラスの壁 (徳間文庫)

ガラスの壁 (徳間文庫)

 

  西村寿行は世界一面白い。

 

 積ん読が、減らね~~~

 読んだ本より買った本のほうが多い気がする。来年は新しい本を買う前に積読を消滅させるぞ(不可能では?)では、よいお年を~~~

 

近況

 大変お久しぶりです。

 

 Webの名前(異島工房)で最近小説を更新していないので存在が消えかかっていますが、このたび、複素数太郎(@Fukuso_Sutaro)さん主催の同人誌『インターネットの神様』に寄稿させていただきました。

 

sutaro.hatenablog.jp

 

 『絶筆』という短編を書いています。9/9、文学フリマ大阪の青本舎ブース(H-19)にて頒布されるそうです。というのも僕が文学フリマに参加すること自体初めてなので、何も分かりませんし、分からないとは何か、分からないとは何かとは何か、何も分からない。

 絶筆はしません。内容ですが一口には説明しづらく、

  はい。という感じです。当日お暇な方はぜひお越しください。通販サイトでも購入できるようです。

booth.pm

 

 

 あと、こちらは文学フリマには出ないのですが、紙媒体での名前(伊東黒雲)で別の同人誌?に詩論を寄稿しました。論と言ってもフォーマットをぎりぎり(小)論文の体に寄せただけで、実質現在の詩(特に自由詩)についてのお気持ち表明です。完全に頭の悪さが露呈しており、論理はほぼ破綻、良く言ってザルです。慣れないことをするもんじゃないと思いました。が、ほとんどキレて書いていたので、キレているということは分かると思います。

 

 1,2年前の僕なら原稿を全デリートし、方々との連絡を絶って鬼籍に入るところですが、出来の悪さに対する恥じらいを捨てたので原稿を捨てませんでした。歳をとると、恥かかないと上手くならないし、むしろ上手くなっていくプロセスに恥とか感じる必要なしということが分かってくる。とにかくここに残る意味不明な熱量だけは本物だと思います。こちらの方はいつ、どこで出るかは未定なので諸事決まったらまた告知しますね。

 

 「Web小説サイトで何かを書く」ということについては色々と考えなきゃなあという感じがしています。虚空に叫んでいる感は別に気にならないんですが、嫌でも他人の創作物が目に入るので、意識せずともプロットが人気作品の形式に寄っていったり、出来もしないのに文体を変えて媚びようとしたりしてしまう訳です。自我が弱い。もっと真剣に孤独な創造力と向き合い、虚空が裂けるくらいの絶叫を残す必要がある。

 

 最近は小説よりも詩や学っぽいものを多く読んでいました。

 

 「書くということに関して一家言ある人々」は結構な割合で物を書き残すことの無意味さ・空しさを綴るんですが、「それ書いちゃってるじゃん」という素朴な気持ちが溢れてしまいます。書くということを完全に止められない人間というのは、好きとかではなく病的なものに書かされているのだろう、などと言い尽された事を思う日々です。

 

それではまた。 

 

生誕の災厄

生誕の災厄

 

 

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

「異形の”不”正解」が持つ力

 (無言で右手に握りしめたハツカネズミの生首を差し出す)(無言で右手に握りしめたハツカネズミの生首を差し出す行為を挨拶とする部族の出身なので)(嘘です)

 

 遅まきながら映画『セッション』を観ました

 世間は『シェイプ・オブ・ウォーター』のアカデミー賞4冠で騒がしいというのに、2015年アカデミー賞3冠作品をのうのうと観ていました。寺山修司言う所の(だったっけ?)最初にやる天才にも、最後までやらない豪傑にもなれない、ただのバカなので

 

 

  

 それで、「一番怖いのはフィッチャー先生ではなく監督」という感想になったのですが、何でかってというと、この映画全体が、役者が言っている事とやっている事、起きている事が不整合だからなんですよね。例えば、

 

 ・「チャーリー・パーカーが”バード”になれたのは、シンバルを投げられたから」と言うエピソード→シンバルを投げた因縁のジョージョーンズとの再会の演奏の際、「あそこでは”バード”は生まれなかった」とするエピソードを語り、スパルタ教育を否定するような物言いをしつつ教育現場では生徒にシンバルを投げ続け、「ジャズは終わっていく」と言いながら自身は「スターバックスで流れてるような」終わった演奏をするフィッチャー先生

 

・「バディ・リッチを目指す」というこの上なく明快なジャズ志向でありながら、ジャズのスタンダード・ナンバーを一向にメモリーする気が無く、テンポがまともにキープできないということをトラウマレベルで指導されているにもかかわらず、最後まで一切メトロノームを使わず、ただただ叩けるテンポを上げることだけに執念を燃やすアンドリュー君

 

 などがあります。

 

 菊地成孔氏が執拗にやった『セッション』と『ラ・ラ・ランド』批判で、監督・ディミアン・チャゼル氏の変質者じみたジャズへのストーカーっぷりは十分あぶり出されていると思うので、これ以上その方向に付け加えることはしませんが、個人的にはあの2作でもってディミアン・チャゼル氏は自ら、己に「ジャズ・ドラマーとして大成出来なかった自分」という呪いをかけてしまった様に思います。『セッション』でジャズへの恨みを全部晴らせればよかったのにね。『ラ・ラ・ランド』でもずるずるやっちゃったからもう延々と引き摺るしかないでしょう。これを断ち切るには『セッション』なんて吹き飛ぶレベルの浄化をやる必要があります。

 

話は変わりますが

 最近クラファン画家なるものが炎上しているのを観測しました。火が怖いので本人のツイートを貼ったりはしません。われわれは宇宙的観点からは未だそして永遠に野生動物である

 

kyoumoe.hatenablog.com

kyoumoe.hatenablog.com

 火事の遠景です。

 

 全然絵を練習する気のない(ように見える)元ラッパーの(そして飽き性に見える)人が、ホームレスでやったり、クラウドファンディングでやったりしておこられているようです。詳細は各自お願いします。火が怖いので。

 

 それで、なぜ『セッション』の話から突然クラファン炎上にいったのかというと、ここには、人間に「これはおかしいだろう!」と無理にでも言わせる力が共通してあるんですよ。

 

 文脈から外れた存在、"不"正解に、大勢の人々が気づくことは基本的にありません。人間誰しも帰属する社会は、その社会自身の持つ文脈にあった正解(ダブルミーニング)を基本的に提示するものです。”不”正解を排除するのが公教育(特に国語)と認知療法であり、不正解を排除するのが法と社会慣習、あと獄です。

 

 不正解を見つける能力の高い人がいます。彼らは社会に現われる様々な現象から不正解を抽出できますが、多くの社会問題は、そういった現象を見つける能力の高い人々、例えばジャーナリズムや官僚、悪いオタクなどによって「問題」として加工され、解決すべき問題として提出されます。これが「不正解」を咎めるものとして認知される時、形式は正解です。この作業の結果、彼らは不正解を見つける能力の高い人と見做されます。

 

 ツイッターでの炎上も、それに加担した人間全員が当該ツイートを参照して燃えるのではなく、目ざとい奴が悪意ある形の「問題」に加工して、解決という名の暴力的RTやリプをやっていくわけです。

 

 人間は不正解を見つけ、「解答」として殴りにかかるのが大好きですが、”不”正解を殴るのはあまり得意ではないようです。基本的に公教育のおかげで社会に”不”正解を出す要素が激減するというのがあります。見慣れてないと殴りにくいよな。例外的にこれが得意な人間が集まる界があり、一般に法曹界、学界などと呼ばれています。あと悪いオタクはこっちも大体得意。悪いオタクは本当に悪い。

 

 (正解と不正解の線引きをしている「不」についてですが、嵐の海に浮かぶ木みたいにガンガン動く模様です。”不”については、メタ視点です。)

 

 『セッション』、『クラファン画家』いずれも「問題以前」であり、かつ(方向は逆ですが)どちらも”不”正解として現れています。『セッション』は「問題」の提出に(おそらく意図的に)失敗するという形で。『クラファン画家』は、思想史・芸術史の文脈を理解しないまま無教養主義を体現した、意図せざるポストモダン・アート的人間になりうるという形で。

 

 だから『セッション』は内容より監督のディミアン・チャゼルが面白いのであり、『クラファン画家』は絵より本人が芸術的に面白いのです。

 

 ついでに言うと、『クラファン画家』の炎上は、他のツイッタラーの炎上とは一線を画すことが(かなり強引に)できます。彼は自ら「画家」という芸術家の一形態を名乗っている事で、自分の行為をコンセプチュアル・アートとして解釈される権利を(好意的に見れば)得ているからです。「画家としてあるとはどういうことか?どこからが画家なのか?」という問いを体現している、「今まさに生きられている芸術」ともいえます。

 

現代のアートは自らに向けられた偶像破壊的な身振りを流用し、そうした身振りを芸術制作の新たな様式とすることで何度も力を示してきたのである。現代の芸術作品は、より深い意味においても自らをパラドクス・オブジェクトと位置づけた──イメージであると同時にイメージの批評でもあるものとして。*1

 

 画家のイメージであると同時に画家という制度そのものへの批評でもあるものとして生きる芸術家のイメージ『クラファン画家』。絵を売らずに本人を売るクラウドファンディングで、なまじ50万円集めてるのでさらに説得力が上がる。燃えてから芸術家を名乗るヤツはフェイク

 

 ……分かりますか?これが「問題」への加工です。こういう引用をつけるとさらにそれっぽくなるな。何人かは騙せそう。

 

 本来あからさまに提示されている『問題』が構造的に自滅している、問題提起としての”不”正解『セッション』。

    本来ただの一炎上にすぎなかったものが、アーティストを名乗りクラウドファンディングで金を集めた結果、彼そのものをアートとして擁護しうる可能性を残した、不正解としての”不”正解『クラファン画家』。

   

    これらは観た人間に殴りたいと思わせずにはいられない魅力を放つ「異形の”不”正解」なのです。

 

 ……ここまで書いといてあれですが、オレは『セッション』、『クラファン画家』、どっちともダメです。『クラファン画家』に関しては、オレが知らないだけでアウトサイダー・アートの歴史の中に先駆者がとっくの昔にいそう。擁護は難しい技術。

 

さいごに

 

 ……しっかし、オレも金欲しーなー。黒塗りしてピアノ弾いたり、精液で小説書いたりすればいいのかな。

 

 では。

 

 

アート・パワー Art Power Boris Groys

アート・パワー Art Power Boris Groys

 

  アート・パワーは良いぞ

*1:ボリス・グロイス『アート・パワー』現代企画室、p21-22

ブリティッシュ・ジャズと、瞬く冬のながびき

 2月は1年で最も短い月だ。けれど、マフラーの覆いきれなかった首元の寒さが、夜への距離を引きのばしていく。容赦ない凍えた風は紙やすりで擦るように痛く、そのうえ沁み込んで来るから性質が悪い。

 許し難い大地。だが仕方ない、これが2月だ。

 

 記憶に間違いないなら、ぼくが最初に聴いたブリティッシュ・ジャズのパーソネルには、Kenny WheelerJohn Taylor、そしてNorma Winstoneがいた。

 

youtu.be

 「とても透明な音楽だ」。初めて聴いた時そう感じた。この音楽が成立している世界の様子を想像する。乳白色の煉瓦造りのアパートメントが立ち並び、赤や濃いグレーのアスファルト、あるいは石畳の路地。しかしこの街の主役は建物ではなく、その間の空間にある。Kenny WheelerJohn Taylor、Norma Winstone達は、街の空気を透明な絵の具で色づけていく。Kenny Wheelerの絞り出すような高音は、その必死そうな音色とは裏腹に、熱さとは無縁の雰囲気がある。ひたすらに冷たい。

 "O"を聴きながら歩く。太陽は傾いて5時。イギリスと日本の大気組成が変わらないことを改めて実感させるAzimuthの人々。ブラジルのフュージョン・バンド、Azymuthと間違えたりするのは所謂"あるある"話だ。

 だが、Azimuthの音楽には"痛さ"が無い。空気から痛覚を抜くことができるのだ。彼らは。

Azimuth / The Touchstone / Depart

Azimuth / The Touchstone / Depart

 

 

 家に帰って、レコードを組み立てる。George Shearingのレコードを探すが、おっくうになってくる。部屋が耐えられないほど寒いのだ。エアコンをつけ、温まるまで布団の中にうずくまっておく。スマートフォンyoutubeにつながっているから、彼の演奏を探す。youtubeが、スマートフォンが青春の途中からやってきた世代の人間としては、未だに悪い行為の様な気がする。だけれど世の中には悪い人間ばかりだし、かくいうぼくもそうだろう。

www.youtube.com

 George Shearingは「ロック・ハンド奏法」という奏法でピアノ弾きの中では有名だ。ぼくは手が小さいから、オクターブで収まる彼の奏法には助けられた。しかしとにかく上品だ。演奏内容だけでなく演奏中の佇まいにしてもそうだ。詳しいことは知らないが、彼はハーブもコークもしていないような気がする。

 布団をかぶっているから周りは真っ暗で、小さな画面の中でGeorge Shearingだけにあてられるスポットライトだけが遠くに見える感じだ。コンサート会場の後ろの方に座っているような気分になる。実際は正座に蹲るようにして、凍えているのだけど。

 George Shearingが冬の音楽かといわれると、全部がそうとは言えないと思う。ただ、きっと暖炉つきの部屋の中で聴く音楽だろう。寒いところで、ましてや外で聴く音楽じゃない。寒さは外にあるべき音楽だ。

 

 ようやく厳しいのが足先くらいで済む温度になり、いそいそとベッドから抜け出す。晩飯を作らなければならない。飯を食わなければ動けないのに、飯を作るのがだるくて動きたくなくなるのだから、人間はあまり合理的にはできていない気がする。生命の循環論法。動け、飯を作れ。お湯は温かいぞ。

 気分を盛り上げるためにスピーカーに接続したままyoutubeを連続再生。たまたま流れてきたのがJames Taylor Quartetだ。

 

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 ぼくは彼らのムーブメントを良く知らない。クラブという存在が、遠い。クラブではダンスをする(らしい)。ダンスというのはカロリーを消費して、ただ、それだけだ。ぼくには合わない。しかし、寒い。行ったこともないクラブの様子を想像して、身体をそれっぽく動かしてみるけれど、自分のぎこちなさに耐えられなくなってやめる。ぼくは踊れる人たちがうらやましいだけなのだろうか。そんなことはないだろう、と思う。

 具のないぺペロンチーノが出来た。これで十分だ。温かさに代えられるものがどこにあるだろうか。財布だって温かい方が好きだ。いや、好きなのはぼくだけかもしれない。財布も体型を気にしたりするのだろうか、できれば太っちょでいつづけて欲しいのだが。

 見えないピンクのユニコーンに乗る見えない好色家たち。神経不安症の女たちは踊る。自らからの搦め手を逃れるために。暗い箱にミラーボールは回る。さようならスペース・カウボーイ。肉のない青椒肉絲と具のないぺペロンチーノ。

 この部屋にも女はいない。最後の女が消えてからずいぶんたったはずだが、瞬くような時間しか経っていないように感じられる。そう言えばずいぶん夏が曖昧だ。

 

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 イギリス音楽といえば、と多くの人に聞いたら、まず挙がるのはロックだろう。この分野に関して、あの国は、数え切れないほどのスーパースターを輩出してきた。

 ジャズは常に他の音楽を吸い上げ、自分の文脈に消化して生き続けてきた。George Garshwinはそれこそスウィング・ジャズの初期から吸い上げられてきたし、なんならディキシーランド・ジャズの名曲には黒人霊歌も多い。バンド経営に行き詰ったCount Basie Orchestraは、『Basie on the Beatles』なんてアルバムを出す。

 Go Go Penguinはバランス良くすべてを引き受ける。ドラムの繊細な音色の使い分けによって、雰囲気はブリティッシュ・ロックからエレクトロニカまで自由自在。ピアノはミニマムなプレイをすることが多いが、ベースはそこまでプレイをパターン化すること無く、音楽全体を支配するモードのアクセントとして機能している。あらゆるジャンルに根を張り巡らせ、吸い上げているのが分かる。

 熱いといわれるかと難しい。Penguinとはいっても、Go Goと追いたてる。北風を追い風にしているような気分だ。

 

 

 飯を食い終わった。何かしようと一瞬思ったけれど、眠い。寒いと眠くなる。フランダースの犬にもそう書いてある。

 シャワーをいそいそと浴びて、中学の時から使っている上下揃いのジャージに着替える。お湯をそんなに使いすぎるのは良くない。ガスも電気も水道も全部使うのがシャワーだ。素早く使って出るに越したことはない。アメリカ人は3分でシャワーを終えると聞いたことがある。奴らがさっぱりする間に、ウルトラマンの仕事は終わる。ありがとう、さようならゼットン。この2月だけでいいから、2兆度の炎の温かみを少しだけ分けて欲しかった。

 目を閉じると、ぼくは程なく意識を失った。喉を傷めないようにエアコンを切る。張り詰めるような静寂に、外の冷気が呼応したのか。風の入ってくる場所はないはずなのに、どんどん外気と室内の温度が近づいていく。停止線、死の平衡温度。

 煮汁の入ったままの鍋がやけに目立つ部屋が、雑然とした棺に変わる。ぼくの眠るからだはふわっとベッドから浮き上がると、一瞬の後、綿埃の目立つ布団だけがぱさっ、と音をたててベッドに落ちた。 

 

Easter [12 inch Analog]

Easter [12 inch Analog]

 

 復活祭の日までぼくはロンドンや上海、東京の空気になるだろうし、姫葱の芽、桜の芽、梅の花になるだろうし、 目白や雀の鳴き声になるだろう。痛みのない冬、遠ざけられた冬、忘れられた冬。追いたててくる冬。すべてが時の帳の向こう側へ去った後、艶やかな貞淑さを纏って、春がやってくる。

 

 ただ、ぼくがこの世界に再び目覚める日は、きっとそう遠くないんじゃないんだろうか。こんなに熱く素晴らしい音楽が生まれているのに、簡単に死んで、消えてなくなってしまうのはあまりに惜しいだろう。

 なんといったって、2月の世界に春がやってきたのだ。Ashley Henry & the RE:Ensembleによって。

 

あとがき

 ……駄文を長々とすみませんでした。Ashley Henry & the RE:Ensembleの新譜、『Easter』が余りに良すぎるということを、小説っぽく伝えようとしました。

 イギリス生まれのキーボーディストAshley Henry責任監修、ラテンからRobert Glasper Musicまでを厳選し6曲に凝縮したのがこれです。結果的に1曲1曲の粒立ちがやばいことになっており、アルバムとしての長さも絶妙(30分ちょい)で、一瞬で一周し、リピートを繰り返すため時間が延々と溶けます。

 LAで活躍している様ですが、発売元はイギリスなので(Sony Musicのイギリス法人)、ブリティッシュ・ジャズに含めていいだろうということですね。”ブリティッシュ”・ジャズとしてのセールス的最大の成功は、おそらくアシッド・ジャズであり、先に挙げたJames Taylor Quartet以外にも、IncognitoBrand New Heavies、もっと広げればJamiroquaiも入るでしょうが、私がまだまだこのジャンルを未開拓なので、それほど掘って解説することはできませんでした。これ難しい。

 

 毎年凄まじい数の音楽が生まれ、そして忘れられていきます。

 皆さん、それぞれのベストアルバムを掘っていきましょう。

 

 それでは。

 

あけましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。

 各位、2019年まで生存しましょう。わたしもまた、生きていきます。

 今年の目標は、生存です。生存の余剰として成果があります。

批評的なものをどうするかについて

 基本的に、

 『小説やエッセイ、軽い批評』などはカクヨム

 『商品紹介とか好きなもの紹介みたいなブログ的な記事』

はここでやっています。(すべてにおいて更新が滞っていますね……?)

 

 ただ、批評的なものに関してなのですが、こればかりは今後はてなブログでやろうと思いました。理由は端的にアーキテクチャが批評に向いているからです。カクヨムハイパーリンク使えないし注釈記法も使えないし……と記法にものすごい制限があるんですよね。その点はてなブログはやり放題なので。

 

 これはたぶんWeb小説プラットフォーム全般に言えることですが、メディアをせっかく物理媒体から電子媒体に転換したのに、小説の記法としての思想が物理=紙媒体の思想をそのまま踏襲しちゃってるんですよね。もっと自由度の高いプラットフォームがあればなあ……と思っていますが、自作する力量が無い。力及ばず……。無念。

 

 書きたいことは色々あるので、そんなにガッツリやりたくねえな、ぐらいに思ったことを「考えたこと」タグつけて書き捨てていきたいと思います。一回アウトプットすれば、脳内で延々と同じことを周期的に考えてしまうことから脱出できることに気付きました。気づくのが遅い。

 

なんとか、生きていく

 死なないことのハードルが(自分にとって)結構高いということに気づいたので、精神と肉体が死なないように頑張ります。最近はChristian McBrideの『Live at Tonic』聴いてます。CD3枚分にみっちり詰まったライブ+セッションを前にして、演奏のヤバさ以前にコイツら体力が無限では?という疑問がわく。

 

ライヴ・アット・トニック

ライヴ・アット・トニック

 

 

 それでは。

今年聴いた良かったアルバム

 こんにちは。年末、振り返るべきことはたくさんあります。

そこには過ぎ去りし日々の死体が、、、

 

今年は70枚くらい聴いた

 はい、野暮ですが前回のエントリ通り、人間は量を自慢するために量を消化しても何にもなりません(第一年間70枚とか到底自慢になる枚数ではない)。これくらい聴いてる人の「良かった」だと思ってもらえればいいです。

 

 去年出費がえぐいことになったので、Apple Musicで抑えようとしたのですが、ダメでした。Apple Musicに無いアルバムを買っちゃうんですね。人間の性があり、業があります。

 

 気になるのがあったら、例によって年代バラバラですが……お近くのタワレコHMV、中古CD屋、林檎音楽などを利用する手があります。聴いていきましょう。それでは、ガンガン行きます。

 

ジャズ

 

Alcanza

Alcanza

 

 上半期にリリースされ、今年の個人的ベストアルバムと化した、キューバ人ジャズピアニストFabian Almazanの『Alcanza』。今後ジャズにおいてはラテンアメリカの流れが(ますます強く)くると思っているのですが、来年もその筆頭だと思われます。弦楽四重奏団とジャズのオーソドックスな楽器が対等に機能しており、楽曲も交響曲を思わせる配置。ベースのRinda Oh、ドラムのColy Henryが野太く力強すぎるため、弦楽四重奏団の音色までもが異様なエッジを持つことになります。相当クラシックを意識していると思います。本人の好きな作曲家にショスタコーヴィチがいたので、わかりを得ました。胃もたれするほど濃いサウンドなので、覚悟完了してから聴きましょう。

 

Introducing Tierney Sutton

Introducing Tierney Sutton

 

 今をときめく謎ジャズシンガー、Gretchen Parlatoを教えたりしているTierney Sutton先生の アルバム。王道を王道通りやり、且つ楽しんでやることで、「教科書的」を超える演奏が出来るのだなとひしひし伝わってきます。個人的には『High Wire』がぶち上がるので好き。そういえば今年、絶版してて超高額で取引されてたGretchen Parlatoの自費リリースアルバム、『Gretchen Parlato』が再版され、反射で買ってしまいました。業です。

 

モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのフィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーン

モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのフィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーン

 

 Phil Woodsに関しては、フリージャズまで出来るCharlie Parkerという感じで控え目に言って最強なので、アルバムを目にしたら買わなければならない。日本国憲法にもそう書いてある。 とにかく「倍音?なにそれ?デシベルあるの?」という平面的音色かつ尋常じゃない轟音で吹き続けるので、リズム隊のテンションがおかしくなっている。観客もおかしくなっており、無理やりアンコールで舞台袖からPhil Woodsを引き摺り出している感がある。

 

En Subida

En Subida

 

 王道のハード・バップ、スタジオ録音だと良く聴いた、Quinteto Urbanoの『En Subida』。アルゼンチンのHigh-Five Quintetともいうべきシャレ乙さと熱さを兼ね備えている。思ったほどラテンのクセが強くないので、聴きやすいと取るか、物足りないと取るか。1曲目『Travesia Urbana』は速度がでている。

 

 

Gravity Zero

Gravity Zero

 

  フランスからの刺客、鍵盤奏者のLaurent Coulondre『Gravity Zero』は、ドラマー4人と入れ替わり立ち替わりデュオをやるという馬鹿が考えそうなことを実際にやってみたアルバム。ドラマー4人が同時に演奏している曲もあり、控え目に言ってジャングル。Mehlianaの『Taming the Dragon』といい、ジャズピアニストとドラマーのデュオは可能性を極限まで広げてくれることを教えてくれる。『Nitro』は題名通りテクニックが爆発している。しかし最近のドラマーはみんな上手すぎて怖い。どうなってんだ。

 

Painter

Painter

 

  「ドラムはメロディー楽器」を体現するAri Hoenigですが、しょっぱなの『I Mean You』でおかしなスピードでテーマをたたき出します。付いていく周りがすごい。普通に叩いている時も繊細なシンバルの音色コントロール、異次元なブラシワークなどが曲全体の雰囲気を支えていて、ドラムの革命手の名にふさわしい実力があることがありありとわかります。繰り返しになりますが、ドラムはメロディー楽器です。

 

 

Apex

Apex

 

  「繰り出される旋律が蛇使いの笛に最も近いサックスプレイヤーランキング」殿堂入りのRudresh Mahanthappaですが、超傑作『Bird Calls』に比べるとかなり理性を保っており、おそらくJack DeJonetteやJason Moranによる丁寧な空間作りが貢献しています(Matt Mitchellとかブレーキがぶっこわれてるからね、仕方ないね)。理性を保っているからダメかといわれるとそうでもなく、『Who?』のBunky Greenとのサックス2人によるイントロからの流れ聴いていると、こいつらには何が視えているのか、という気持ちになります。

 

in Tokyo

in Tokyo

 

  ブラジルの万能人、Antonio Loureiroは今回ピアノとボーカルをやっている。他のプレイヤーは日本人なのだが、世界観の共有がしっかりされているのか全く日本感なく完全に現代ラテン音楽として聞こえる。とにかくピアノの輪郭がはっきりしており、ボーカルと右手がユニゾンすることで強制的にブチ上がるのが卑怯。『Lindeza』とか特にヤバい。

 

Voyager: Live By Night

Voyager: Live By Night

 

  現代ジャズ・ドラマーの最高峰Eric Harlandですが、ドラムはJohn Coltrane(サックス)から学んだとか頭がおかしいことを言うだけあって延々と演奏を過熱させます。メンバーも当世最強といっていいメンツであり、特に当時23歳のギター、Julian Lageの反応スピードとメロディー構成力がすでにおかしい。1曲目『Treachery』で完全に優勝する。

 

オープン・ブック [日本語帯・解説付] [輸入CD]

オープン・ブック [日本語帯・解説付] [輸入CD]

 

  現代において、ジャズへのクラシカルなアプローチをとるジャズピアニストの中では間違いなく最高のFred Herschがまたもや正解を叩き出した。アレキサンドル・スクリャービンの様な音模様が即興で完全に構成されており、そのまま写譜して知らない人に見せたら、即興音楽だとは気付かれないのではないか。1曲目『Orb』を聴くと魂が肉体ごと浄化され、エントリが書けなくなる。

 

Connection

Connection

 

  Don Ellisは買うことが憲法やら聖書やら、というレベルでは無く、気づいたらいつの間にか手元にあることになっている、という感じで、つまりどうしようもありません。病気です。常に最高。

Rock,Pop

 詳しくないジャンルを語る時、まとめておくことによって流血を回避することが出来る(出来ない)。

 

SUPERFINE

SUPERFINE

 

  冨田ラボが「最近Mark Guilianaとか聴く」、とか言っている記事を見て「!?」という気持ちになりましたが、『冨田魚店』の間奏を聴いてなるほどをしました。1曲目の『Radio体操ガール』を聴いて「YONCE……こんなに虐められて……」という、「すげえ!」よりも先に「作曲者やりすぎでは?」の気持ちが来ました。

 

Dirty Projectors

Dirty Projectors

 

  このアルバムで初めてDirty Projectorsを知ったのですが、アレンジがとにかく自由すぎて感動しました。何曲かからそれぞれ別のアイデアを引っ張ってきて、奇跡的なセンスでバランス良く調合する感じ。Flying Lotusを初めて聴いた時の感覚に近い。ボーカルのデイブ・ロングストレスとかいう人生がつらそうな苗字のリーダーですが、ずっと一緒にバンドやってきたシンセの人と別れてショックすぎ、立ち直り、これを出したそうです。強く、いきていくこと、だいじだ、、、

 

世界はここにしかないって上手に言って

世界はここにしかないって上手に言って

 

  とにかく『SUNNYSIDE』だけでも聴く価値がある。Aikoが現代ジャズ沼にぶち込まれたような様相を呈しており、『南へ』よりはかなりPopになったと思う。シティ・ポップといわれる人々がいるけれども、彼らはポップ→クラブ系グルーヴであり、ものんくるはジャズ→ポップなので全く逆だと思う。ジャズ編で出さなかったのはそういうことです。もっといろんな層に売れて欲しい。

 

COLORS [CD]

COLORS [CD]

 

  恥ずかしながら初Beckだったのだが、「こんなファンキーなコード進行でこんなにポップに!?」と、困惑しながらぶち上がる変な体験をしてしまった。『Dreams』の冒頭とか今すぐサッカー日本代表の応援歌にした方がいい。かなりのトラックを積んでいるとは思うが耳にはシンプルに集積されたすばらしみが届くので、「これが売れる音楽というヤツか……」という思いを新たにした。

その他

 

白鳥おどり 白鳥の拝殿踊り 石徹白民踊

白鳥おどり 白鳥の拝殿踊り 石徹白民踊

 

  衝動的に購入した岐阜の民謡集ですが、なんといっても各CDの最後についている謎リミックスから、おどろおどろしいトリップ感が発生していてそれ目当てだけでもかなりいいと思います。日本にはグルーヴが無いのか。否、ここにある。

 

DIAMONDS/ICE [12 inch Analog]

DIAMONDS/ICE [12 inch Analog]

 

  当方、海外のアーティストに関してほとんど歌詞を無視し、サウンドのみを重視してしまう傾向にあるので、ヒップホップのリックの良さなどについて一切語ることが出来ない(かなしいけど仕方ないね)。それでもやはりJ Dillaのトラックから発生する気持ちいいヨレを感じることはできるし、現在ヒップホップ発のビートがどんどん他ジャンルの土台を攻めていっているのも腑に落ちる。今年は他にもNxworriesの『Yes Lawd!』や、A Tribe Called Questの『We Got It From Here... Thank You 4 Your Service』もよく聴いた。歌詞のわかりが得られるようになりたい。

 

Curious

Curious

 

  エレクトロニカには無限の可能性が残されている。それは科学技術であるからだ。人類が滅びない限りこのジャンルには工夫の余地がある。ドラムマシンの音色が若干時代を感じさせるといえばそうだが、それでも総体として出てくる音は時代を超越するものがある。こういうものを聴くために、生きている。

 

ライヒ:管楽、鍵盤と弦楽のための変奏曲

ライヒ:管楽、鍵盤と弦楽のための変奏曲

 

  Steve Reichは血液の様な音楽をしているので、定期的に聴くことによって生命を維持することが出来ます。ナウシカ成分を心なしか感じることが出来る。てか久石譲ミニマル・ミュージックのアルバム出してるしそりゃそうか。

おわり

今年は、Thundercat『Drunk』、Kurt Rosenwinkel『Caipi』、Kendrick Lamar『DAMN.』など、かなりの話題作が登場して音楽シーンが全体的に盛り上がってたような記憶があります。宇多田ヒカルも結構出してましたね。音楽は良いということがわかる一年でした。2018年は音楽が良いということがわかる一年にしたいとおもいます。では。