休憩室

人間を休んでいる

2018年に読んだ良かった本

 もう終わるのかよ2018年

 お久しぶりです。文フリの告知ぶりですね。

 2018年は人間関係の年でした。来年の予想ですが、人間関係の年になると思います。

 

 このブログに関係することで特筆すべきこととしては読書ノートをやめてしまったというのがありました。いや~~~~~今思うとやめなくてよかったな。いい本自体は記録しなくても記憶に残るんですけど、その細部を説明しなきゃいけない段になって途端にめんどくさ度があがるんですよね。来年は読書メーター復帰も視野に入れていきたい。

 

 それでは、読んだのが早かった順に紹介していきます。2018年出版の本というわけではないのでご了承をば……

 

勉強・学術系

 

科学哲学から見た実験経済学

科学哲学から見た実験経済学

 

  経済学と現実のズレを前にしたときには基本的に二つのアプローチがあって経済モデルを現実に寄せていくか現実を経済モデルに寄せていくかなんだけど、そのどちらに対しても実験というアプローチは哲学(とくに論理学)的に有効だよね、ということが事例を交えて書かれている。経済学101といい、現実を経済学的に改造しようという気合の入った人々がいて僕はうれしいよ。

 

科学が作られているとき―人類学的考察

科学が作られているとき―人類学的考察

  • 作者: ブルーノラトゥール,Bruno Latour,川崎勝,高田紀代志
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 1999/03/01
  • メディア: 単行本
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  自然科学の成果がどのように生み出されているのかを推理小説的に再構成し、それには社会的営為が介在していることを明らかにした、アクター・ネットワーク理論の先駆けとなった本。真理が真理になるためには真理に携わる人々が自分たちの科学を正統とし、そうしつづけるために闘争しなければならない。科学は軍という強い比喩。

 

日本現代怪異事典

日本現代怪異事典

 

  どれだけ読んでも、どこから読んでも飽きないですね。ババアの多さ。とにかくババアが素早く走る。子供たちはでかい数字が好き。インターネット発の怪異も多く収録されていて、2ちゃんねるにそんなに深く使っていなかった自分としては新鮮な情報がいくつもあってよかったと思っていたのが、巨頭オになっていた。

 

資本主義リアリズム

資本主義リアリズム

  • 作者: マークフィッシャー,セバスチャンブロイ,河南瑠莉
  • 出版社/メーカー: 堀之内出版
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  「絶望は愚か者の結論だ(大年寺三郎太)」とばかりに、資本主義しかないと思い込ませてくる資本主義リアリズムに隙は無いのかと筆者は探っていく。精神疾患の増加に資本主義の亀裂を見るのだけど、筆者がうつ病で自殺しているので本当につらい気持ちになる。コンテンツの大量常時消費に駆り立ててくる資本主義を生き残った者は、死ぬまで戦わなければならない。僕は死にそうですが……

 

西欧精神医学背景史 【新装版】

西欧精神医学背景史 【新装版】

 

  精神医学自体は19世紀くらいから分科した新しい概念なんだけど、この本では精神医学の源流を古代ギリシアまで遡り、てんかんとかヒステリーなど昔から知られていた症状に対して人々がそれをどうとらえ、どう対処してきたのかという歴史を見ていく。そういう意味では西洋的精神の系譜学としてみることもできてとても面白かった。てんかん的発作を、ダイモーンが入り込んできて身体を操ったのが原因として本人を恥から守るというシステムとか良かった。(特に古代における)神話とか宗教の重要性が本当に身に染みる。

 

小説・文学系

麻薬常用者の日記〔新版〕 I天国篇
 

 

 オカルト界の雄、アレイスター・クロウリーの小説です。男女がひたすらヘロインをやって気持ちよくなったり完全に無になったりを繰り返すよくある麻薬文学ですが、後半に突如クロウリーが建てた実在する宗教施設(?)、テレマ僧院への勧誘が始まり、登場人物もテレマ僧院に来ることで己の真の欲求に気づき自己救済するというヤバい話が始まります。意外と元気になれる小説なので精神的に弱っている人におすすめ。僕もそろそろ読み返そうかな。薬物はダメ、ゼッタイ。

 

平行植物 (ちくま文庫)

平行植物 (ちくま文庫)

 

 

 絵本作家として有名なレオ・レオーニが書いた平行植物という架空の植物群に関する論文集の体裁をとった小説です。最初は普通に実在の植物かな?と思う人もいるかもしれませんがやがて平行植物たちの性質が明らかに僕らの知っている物質のそれではないことに気づくと思います。注釈も凝っていて楽しい。ボルヘスが好きな人は間違いなく好きです。

 

 

 モテない人間の聖書。モテる人間は『存在の耐えられない軽さ』を聖書にすればいいと思います(適当)

 

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 

 

 表題作で久しぶりに泣いたよ僕は。家族を大切にしようと思ったくらいだよ。

 SFは全然読まずに来てしまったのだけど、とてもストーリーテリング重視で読みやすかった。思えばこれがきっかけでSFを掘るようになった気がする。

 

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

 

 

 ケン・リュウを明らかに贔屓しているな。中国出身のSF作家たちのアンソロジーなのだけど方向性が多様で飽きなかった。特に始皇帝が100万人を使って人間論理回路を組み、円周率を計算させる話が発想の勝利という感じで読んでて爽快さがあった。

 

狭小邸宅 (集英社文庫)

狭小邸宅 (集英社文庫)

 

  本物の文章だけが連なっている本物の書物。一切悪意があるわけではないと前置きしてから、お前は何者にもなれないと告げるシーンは圧倒的な正しさが現前し、福音のように響く。社会人になる前に読み絶望し、社会人になってから読み希望せよ。

 

物が落ちる音 (創造するラテンアメリカ)

物が落ちる音 (創造するラテンアメリカ)

 

  パブロ・エスコバルを中心とするカルテルとの麻薬戦争が終わった後のコロンビアで、ある男が死んだ。彼は何者だったのかをめぐって主人公はある女を訪ね……というのが大まかな流れなのだけど、ラテンアメリカ文学はどうしてこんなに地の文による語りが豊饒なのだろうか。冒頭、エスコバルの動物園から逃げ出したカバが撃ち殺されるという話から自然に本題に滑り落ちていく気持ちよさ、100点!!!!

 

カンガルー・ノート (新潮文庫)

カンガルー・ノート (新潮文庫)

 

 

  脛にかいわれ大根が生えた男の話が生死をめぐる謎の冒険に発展していくのすごい。プロットをガチガチに固めて綺麗に収斂させる三島由紀夫の対極に位置するだろう。こんなにも次々と奇想(おそらく弁証法的な発想を使っているのだけど)を繰り出せる安倍公房からこれからも学んでいきたい。僕は何を言っているんだ。 

 

個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)

個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)

 

  大江健三郎は恥ずかしながら今年まで読んだことがなかったのだけど、ものすごい緻密な心理描写を積み重ねていく。とにかく明晰で、安倍公房のように謎は残さない。重い障害児が生まれるかもしれない、生まれる、無理だ、つらい、いやでも……いややっぱ無理など心情の変化を追うだけで、特に大きな事件を起こすこともなく小説を書ききるのすごい。こんなん書かれたら何も書けんわという気持ちになってくる。

 

砂丘律

砂丘律

 

 

 とにかく本当にかっこいい(語彙力)短歌というと57577のきっちりした韻律があって、字足らずや字余りがあるくらいだと思っていたのだけど、ここに収録されている歌は本当に自由。でありながら散文というには密度の高すぎる言葉が連なっててビリビリ来る。「煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか」の歌から漂う二人の厚い関係性の積み重ね、変遷、不変性そして再会……すごい。 

 

 

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

 

  複数の筆名を使いこなし多様な詩・言葉を書き連ね続けたペソアの散文集。書くということに関してこれ以上ないほど深く絶望し、そしてそれを書くことで乗り越えたことがわかる強靭な思考の軌跡。何度読んでも新しい意味が出てくる。今年出た藤田祥平さんの『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』でも引用されていたような。

 

いい女vs.いい女

いい女vs.いい女

 

  木下古栗は現在の文学界におけるある意味でのトップランナーであり、すべての小説が面白いので買いましょう。今だと文藝で連載されてる「新連載」シリーズは本当にひどい。特に『サピエンス前戯』はすべてが本当にひどかったし早く単行本化してほしい。「いい女vsいい女」だと地味だけど本屋大将が良かった。両手で成人向け雑誌を持って二冊同時に立ち読みするなよ。

 

ガラスの壁 (徳間文庫)

ガラスの壁 (徳間文庫)

 

  西村寿行は世界一面白い。

 

 積ん読が、減らね~~~

 読んだ本より買った本のほうが多い気がする。来年は新しい本を買う前に積読を消滅させるぞ(不可能では?)では、よいお年を~~~